2010年5月アーカイブ

一升餅

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移転準備の関係で保育園に夕方お邪魔しました。みんなに囲まれて,陽だまりの名物「一升餅」の儀礼が執り行われていました。一升餅は「一升」と「一生」の掛詞になっていて,「一生丸く長生きできますように」という願いが込められた,1歳の通過儀礼です。モチ性食品を取り入れてきた日本文化の象徴的な儀礼ですよね。地域によって形式は様々のようですが,一升の丸餅に寿や名前を入れ,風呂敷などで背負わせて歩かせ,立つ前に一生の重みを感じささせるという意味もあるようです。ちなみに,一升は「体積」の単位で,正確には1803.4立方センチメートルで,水なら一升瓶の1.8リットルとなり,米なら1.5kg,餅なら1.8kgとなります。

issyoumochi.jpg背負わす道具の「風呂敷」ですが,これも鞄ではなくて,布で「包む」という文化圏ならではです。園舎が移転したら,リュックをやめて風呂敷登園にすると聞きましたが,包むためには「結び」の技術が必要です。保育的に意味深い取組みになるでしょう。
今日の一升餅の風呂敷は,ほとんど徹夜で刺し子を施されたようです。親が子の成長を願う思いを,「手間」で表現することほど子どもにとって幸せなものはないでしょう。限られた時間の中で,愛情の掛け方を最大化することが大切だと思います。そして,その努力が仲間達の祝福によって増幅され,きっと1歳という時を幸せに過ごしていけるのでしょう。移転園舎が,そんな儀礼を経て成長していくに相応しいものとなるよう,願いのこもった空間創りをしていきたいものです。おめでとうございました。

藍の船出

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aiteisyoku10.jpg久しぶりの天候に恵まれながらも,肌寒い中で藍の定植を行いました。仮住まいだったポットの中から,大地に根付いて行く瞬間です。ポットというゆりかごのような過保護な世界から,いきなり放り出されるわけですから,人情的には気の毒です。でも,藍の成長にとっては試練が付き纏いますが,望ましい環境なのです。先日の田植えの体験を生かして,5から8本程度に株分けをしながら,株間50cm,畝間100cmで植えて行きます。株分けがうまくいかない子,穴が浅すぎて固定できない子,本当に色々ですが何とか無事終了。これからしばらくは「除草」と「土寄せ」(追肥)が,世話をする上では大切です。「栽培」を通して支援することの大切さ,いのちを育てる厳しさ・優しさを感じてもらいたいと考えています。

定植が終わった後,「みんなも,パパやママから愛されたり,褒められたり,優しくされると嬉しいよね。嬉しいから色んなことを頑張れるよね。藍もみんなから大切にされると,それだけ頑張って大きくなって,みんなの服を青くしてくれるんだよ。みんなみたいに言葉で気持ちを伝えられないけど,色でみんなに感謝を伝えてくれるんじゃないかな。」って話してみました。

藍自身は青い色素(インジゴ)の元になるインジカンという物質を葉の中に生成します。これが配糖体といって,糖が結合した形になっています。つまり,成長していくための糖を生成する過程で,副産物としてインジゴを作り出してくれているのです。おそらく,自己防衛機能を高めるために生成するのだろうと考えられますが,その副産物の恩恵を受けて,藍染という素晴らしい文化が生まれて来たという物語を,「いのち」の循環という視点から伝えられたらなと思います。

話は合鴨のその後。今年は「合鴨新聞」なるものが発行されていて,里親からのメッセージを保護者と子どもで共有していこうという試みです。今日待っている間に読まさせていただきましたが,それぞれに関わってくださっていて,本当に感動しました。家族で「いのち」の重さ,尊さを合鴨を通して感じてもらっているようで,合鴨もそうですが,農家の鈴木さんも大喜びだと思います。そして,保育園預かりの合鴨が,住宅事情等で里親になれなかった家庭をショートステイしているのだそうです。この愛くるしい顔を見ていると,自ずと一緒にいたくなりますよね。これからも宜しくお願いします。

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この合鴨達も時機に旅立つときがくるのですが,移転の方もいよいよテイクオフです。本日県から内示が下りたそうです。藍と合鴨と同じく,我らもいよいよ「船出」です。

最初の「キモチ」

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5月25日16時10分。陽だまり保育園園長本田先生が宇大の教壇に!

今年度から,「保育内容の指導法(環境)」という演習授業を受け持つことになり,これまで陽だまりで実践させていただいた藍,そして民家保育園構想を通して,これからの保育のことについて,今風の学生に育ち環境の重要性と環境保育の面白さを伝えたいと考え,悪戦苦闘しながら毎回授業を構想しています。そうはいえ,さすがに15回の授業を今の私の力量ではこなすことができないので,「いずみちゃん」に昨年度末から実地指導講師をお願いしていました。
私自身も人の授業を聴くのは最近ではめっきり少なくなり,大変新鮮な気持ちで第1回目の講義を拝聴しました。授業の中で,「大切なのは最初のキモチ」という短いワークショップが取り入れられました。なぜ,教育者になりたいのか?という問いに対して,

  1. ひとことで言う(書く)
  2. もう少し考えて文章で書く(伝える)
  3. それを隣同士で交換して肯定的に受け止め合う
という作業を通して,保育者として子どもと向き合う姿勢を,学生の心を捉まえながら伝えられていました。格好をつけないで「本心」を伝え合うことのできる大切さを知り,今の格好悪い(足りない)自分と向き合えることができるという,人生を豊かにする基本を改めて痛感しました。来週からの核心的な授業が楽しみです。皆さんも来年度から科目等履修生になりませんか?(宇大のセールスマンではございません)

さて,移転準備委員会としては,今後のワークショップ等の実働部分の詳細打合せ,募金活動,社会発信など具体的に動いていく必要があります。陽だまりの積み重ねて来た保育資源を,さらに生かしていくために「民家」保育園がどうしても必要なのです。その「最初のキモチ」を忘れずに,辛くて大変な現実と向き合いながら,心に残る移築再生にしていきましょう。皆さん一人ひとりのキモチが集まると大きな力になると信じています。それに共感していただける職人さん,支援くださる地域の方々と素晴らしい縁を築くことが,この移転計画を単なるゼネコン事業にしてしまわない鍵だと思っています。間もなく県からの内示が下りる予定です。土間ホールで祝杯を交わす日を夢見て・・・
5月15日(土)の午前中,保護者会の「親の背中をみせる会」が行われ,移転準備委員会も恊働で移転予定地の整備を行いました。親父を中心にOBの保護者も参加いただき,伐採された竹の始末を中心に作業が行われました。移転準備委員会の中でも,移転する前の「土地」を知っておくことが大切だという議論がなされ,幼児組と卒園生らも一緒に汗を流しました。

oyanosenaka10_1.JPG写真は新園舍で最初に卒園する予定の虹組の様子です。まだか弱い感じがする子らが,新園舍でどんな大空組になっていくのでしょうね。それを考えると,どんな園舍環境をデザインしていけばよいのか。建物だけではなく,周辺の環境デザインを必要な「不足」を含めて議論していかなければなりません。

間もなく同窓会が発足するようですが,そこで大切なのは「陽だまり20年保障」です。「子ども」時代を過ごす間,常に情報を発信し,交流を続け,一緒に酒を酌み交わせる日まで見守り,支援していきたいという趣旨です。移築された土間ホールで成人を祝える日を夢見て,移転準備委員会もできる限りのことをしていきたいと思います。
このところ記事のアップができずに申し訳ございません。色々と忙しく,ついつい更新作業が億劫になっていました。が,子ども達の世界は日々更新されているわけで,そうそうサボっているわけにもいきません。気が付けば5月も下旬になり,田んぼの緑,山々の新緑も深くなってきました。まさしく,二十四節気の「小満」の暦通りの風景です。
さて,今年も伏久の鈴木伊佐雄さんにお世話になり,合鴨プロジェクトが始まりました。5月10日に大空組の保護者の協力を得て,大空09の勇姿を見て来た子ども達が,昨年の4倍くらいの面積にコシヒカリを植えました。田植えは後ろに下がりながらの作業になるため,泥に足を取られながら身体を安定させるにはバランス力が要求されます。しかし,日頃のリズムで着けた身体感覚がここでも生かされていました。そして,昨年の田植え体験が2時間にも及ぶ作業をやり通せたのでしょう。

taue10.JPGそして,田植えが終わった後は陽だまり恒例?の泥んこ相撲の始まり。大はしゃぎをしたものの,外の水路の水は冷たく,身震いをしながら一路保育園へ。井戸水の洗礼を受けて,いざお風呂へ直行!田んぼで水の「温かさ」を感じ,そして水路の水の「冷たさ」を思い知り,最後に「あつい」お風呂を味わう。同じ「水」でも全く違う感覚を体験した一日でした。田んぼという空間がいかに稲にとって居心地のいい場所であり,だからこそ多様な生き物が共生し,結果として恵みをもたらしてくれることを,この後の保育の中で感じとっていけるといいですね。

その週末,待ちに待った合鴨がやってきました。今年は5家庭に3羽ずつ里親になってもらい,保育園にも3羽飼ってもらうことになりました。昨年とは違い,孵化して2日目の愛らしい合鴨と思い思いに対面しました。きっと,1か月後の放鳥まで色々なドラマが生まれることでしょう。

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合鴨農法は,1985年に富山県福光町の兼業農家の荒田清耕さんが初めて確立した農法で,1990年以降「アイガモ除草懇談会」を立ち上げられ,技術の改良と普及をされてきました。合鴨が除草と害虫駆除をしてくれる上に,糞が肥料となり,無農薬あるいは有機農法として環境配慮型の稲作が可能となるというものです。まさに,自然の営みの原点に立ち返った農法の一つです。このような食物連鎖によって人は自然から恵みを受けられることを,このプロジェクトを通して伝えていけたらと思います。単に田植えを体験するだけでなく,「いのち」の「循環」を教える環境教育として発展させていきたいものです。
GW後半の初日,移転準備委員会のメンバーで移転物件を見学に行きました。樹齢こそわかりませんが,楠の大木の木陰に佇む長屋門をくぐると,築250年の古民家が一行を迎えてくれます。古民家再生が今回の移転の目玉とは頭ではわかっていても,いざ現物に出会うと,その履歴に刻まれた重厚感に圧倒されてしまいます。参加された方から,「すごい。これが園舎になるなんで,子ども達は幸せですね」と声をかけられた。そんな感覚をもっていただけたことに委員長としては感激した次第です。

itenminak.jpg Photo by Kousakubito

現地見学会の後は,公共施設の民家再生事例として大利根町立図書館を見学しました。サイズこそ違いますが,移転予定物件と類似点が多い再生事例として,参加者のイメージを膨らましてくれました。

伝統的な住生活スタイル(環境思想を含んだ生活様式)を,子らの育ち環境にしたいというのが計画の原点です。しかし,時の悪戯なのでしょうか。「環境」という二文字のために現代的な技術対応としての「規制」が新たに4月から導入されたようです。つまり,「省エネ効率」を断熱性や照明など各々の分野でクリアしなければならないのです。そうすると,土壁など伝統工法は不利になること必至です。しかし,私たちが主張しているのは,そこで生活する者に多少の「不便」あるいは「障害」を設定することで,生活を創造していこうとする生活技術を通して,生きる力の土台を育みたいという「思い」であります。そんな伝統的な環境を今の「基準」に合わせようとすれば当然「矛盾」が生じてしまいます。その矛盾を「仕方ない」とすんなりと諦めるのか,あるいはギリギリまで「戦う」のか。仮に結果が同じであったとしても,プロセスの価値と後に伝えるメッセージが全く違ってくるでぢょう。改正教育基本法に掲げられた「伝統文化の尊重と自国を愛する心を養う」という大義名分が,大人達のご都合主義で歪められてはならないと思います。今の大人が理想とするモノ・コトを単に伝えることが「伝統」を守ることでは決してありません。伝えようとする意味性を次世代を担う子らと共有しながら,適切な緊張感を保っていくことが大切ではないでしょうか。

伝統文化は素晴らしいと安易に賞賛されがちですが,それを真剣に残そうとすると,法的な障害が幾重にも待ち受けるのが今の日本の現状です。百年技術としての日本の伝統工法とは一体何なのでしょうか。数年前,イタリアに行った時のことです。道路工事の現場に出会い,そこで目にしたものは,石畳の石を一つずつ手作業で剥がし,またそれらを丁寧に戻して行くのです。なぜかと聞くと,「この石はローマ時代からここにあるものだから」と言うのです。このような価値観を早く取り戻すべきではないでしょうか。

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